2017南アルプス北岳登山口「広河原」一週間テント泊研修 【マツヤマのレポート】

ここ数年、株式会社マツヤマデザインでは、夏に「社員研修」という「旅」をすることにしています。

最近では、2013年に社員全員で北海道、2014年にはアメリカ・青森、2015年には八丈島と北海道、2016年には、ニュージーランド・ハワイ・北海道と多岐にわたります。

時々、FBやブログ、公式ホームページなどを見て頂いた方に声を掛けて頂きます。人によりさまざまですが大きく分けるとその声は二つです。
「いいなぁ」や「豪華で楽しそうだね」という、うらやましいなぁ的なお声と、「良い事やってるね」や「良い会社だなぁ(笑)」という、ガンバレヨ的な応援の声です。

時々、勘違いをする人は、そんないっぱい観光旅行にいけて、骨休みしていいなぁオイ。と妙に羨ましがって頂いたりすることもありますが(笑)

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僕は、この研修を、株式会社マツヤマデザインの中での大切な骨子のひとつを作る「体験する学びの場」だと考えています。

人は、いつ「学び」「勉強する」ことを止めるのでしょう?学校を卒業した時?新入社員では無くなった時でしょうか?僕は会社こそが最終的な「学び・教育・成長」の最後の砦かと思っています。

株式会社マツヤマデザインはデザイン会社です。創造し、制作し、納品する。その多くのパートはパソコンやソフトだけでなく、そこで働いている「人」に起因すると考えています。

とすれば、昨年よりも、今年度は良い成績を収めたければ、働いている「人」が昨年よりも成長しないことには難しいのです。

僕の尊敬する表現者の一人に宮崎駿さんがいます。子供の頃から、カリオストロの城やラピュタを何回見たでしょう?(ちなみに僕の理想の女性のタイプはドーラです)。

宮崎さんの記事で、こんな趣旨の話を以前読みました。要約すると「焚き火に当たる顔(頬)のシーンの絵を若手に書かせて、何度やってもいいものが描けない。若い人に聞いてみたら「焚き火をしたことがない」ことが分かる→実際に焚き火を体験させる→頬が熱くなると知る→描く→OK出る。といった話だったように思います。

これを、今時の若い人は焚き火も…と言って笑って収めるのはカンタンですが、そこをキチンとやって行くのは、苦労と熱意とお金、何より「意思」と「時間」が必要になります。

僕は、テレビはニセモノだと思う。グーグルや画像検索で調べた画像や知識はただそれだけだと思うのです。

結論を急ぎすぎました。分かり難いですね、すみません。

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たとえば、僕がアンコールワットの遺跡の話をしたとします。僕が、朝日の中のアンコールワットの水面の色や、小さな寺院の中の話をしたとします、するとこういう人がいます。
「ああ、知ってる、見たよ!知ってるテレビで見たよ」と「うん、そこらへん詳しく知ってる調べたもん、以前行きたいと思って」と、

僕の尊敬する大先輩に、残間正行さんという世界70カ国以上を釣り竿を持って旅した方がいらっしゃいます。残間さんなら、きっとこういうかもしれません、「ああ、アンコールワットのあたりで釣るナマズはね…」

知ってると、知ってるは同じ言葉だけど、違う。

テレビは、見たフリ、行ったフリをさせる機械です。日曜の午前中、ベッキーの司会で世界各地の旅の動画を見ているその60分のうち、20分間は広告です。

インターネットは、知ってるフリ、知ったフリをさせる機械です。深夜に買いたいモノや行きたい場所をどれだけ調べても、品物が届いて、自分がそれを使ったり体験して見なければ本当に「知った」ことにはなりません。

少なくとも、僕は、僕が社長をしている株式会社マツヤマデザインは、テレビだけ見て知ったフリ、ネットを調べて知ってるフリから始まる、デザインの制作はしたくないと願っています。

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研修は、少し大変です。
会社で、少しばかり効きの遅いエアコンの中でパソコンを叩いている方が楽です。

研修は、1月、新年と同時に告げられます。
2016年は1月に、全員バラバラに世界のどこかに行ってもらう!と宣言しました。

2017年はこんな感じでした。
「今年の研修は、携帯の届かない、南アルプスの山奥でテント生活をする、一人一つのテントで一週間フライフィッシングをしたりキャンプ!一週間分の食料などは全員自分のものは自分で用意するように」。

自分のは自分で…?

アウトドアには慣れたスタッフですが、一週間、標高1500mのところで自炊テント生活なんてしたことがない人ばかりです。
今回研修初参加のオオバさんに至っては一年ちょっと前まで、東京の目黒で働いていたアウトドア初心者です

世話して連れて行く人はいない。
一週間、ここで生きる道具を考え、揃え、支度をして、自分で荷物を詰めて運び。そこで暮らす。
そこで過ごす時間を想い、想像し、用意する。

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標高1500mは、僕たちが暮らす場所より、温度は約10度低くなります。異世界です。夏でも夜は冷えます。
一週間、冷蔵庫もないテントで、常温で保存が出来るものだけを食べる。

その状況下で、スタッフ全員で力を合わせ、「楽しく」「仲良く」「個々に有意義に過ごす」それが研修です。

いつもよりも、厳しく、初めての条件下で、行ってみたい、行った事のない場所に対応すること。
「人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる」とディオ・ブランドーは言いました。
だとすると、「安心と安全な日々の日常を離れ」初めての環境下で「不安や恐怖を克服して安心を得る」こと

それは、つまり「旅」です。

決して、成果が保障された、「観光旅行」や、ましてや「慰安旅行」ではありません。

やったことのない事をやると「やったことがある人」になります。
成功してもしなくてもです。
テレビで見たことがある人ではありません。その身と心でチャレンジした人です。

今回、株式会社マツヤマデザインの研修に参加したスタッフ達は、「南アルプスで一週間テント生活したことある人」になりました。

じゃあ、それがデザインの役にどう立つのさ?と聞かれたら?
きっと僕たちはこう答えるでしょう。

「さぁ…?」と。

でも、きっとその顔は笑っているはずです。

答えなんて今は出ない、でもいつかきっと答えは出ます。
僕たちは急ぎません。

子供の頃読んだ、ミヒャエル・エンデの「モモ」に出てくる「灰色の男たち」が少しづつ見えてきた気がします。
僕たちの「生きている時間」の使い道を、テレビを見ている事に時間を使わず。

僕たちプロにとって、デザインすることは働くことです。
働くこととはお金を稼ぐことです。
稼いだお金をどう使うのか?それも学ぶべきです。
正しくお金を稼ぎ、正しくお金を使う。

それを学べるからこそ、僕は会社こそが最終的な「学び・教育・成長」の最後の場所だと思っています。

現実の世界は広く、世界は本当に素敵です。

ホントに行った、ホントにやった。

そのラベルを世界地図に貼っていきたく思います。

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